がん検診については、うける意味がないという説と、うけた方が良いとの説があります。当院は婦人科の検診に関してはうけた方が良いとの意見をもっております。
その理由は以下の通りです。
(1) 子宮癌に関しては、癌検診をうける方が増えるのに従い、癌の患者さんが減ってきた事が明らかであること。
(2) 発見された癌の中で早期のものの割合が増えてきており、癌検診の効果 であると考えられること。
(3) 婦人科癌の検診では検診そのものに危険性がないこと。
(4) 費用がそれ程かからないこと(札幌市在住の方ですと、30才以上の方はすこやか検診で検診が出来ます。)
(5) 子宮癌については、これまで考えられなかった程の若い方にも見つかることがあるようになり、進行する迄無症状である可能性があることなどからです。
(6) 20歳、25歳、30歳、35歳、40歳の女性は無料の子宮頸がん検診クーポン券ができるようになりました。
でも癌の検診では気をつけなければいけない事もあります。
(1) 癌検診は信頼出来るのか。 例えば大丈夫だと言われたら絶対大丈夫なのか。あるいは癌の疑いがあると言われたら本当に癌なのかといった事です。
(2) 子宮癌はともかく、卵巣癌は本当に検査に値するかといった問題もあります。
これに対する当院の考えは次の通りです。
(1) まず子宮頚癌については癌、異形成上皮(一種の前癌状態みたいなもの・・・但し自然に良くなることもある)というのが要注意ですが、これは1つの検査で行うものではなく、通 常3つの過程を経るので間違いは少ないと考えられます。検査は(a)細胞診(スクリーナーと言ったライセンスをもった検査技師及び細胞指導医による判定)、(b)膣拡大鏡診(実際の診察にあたる臨床医の判定)、(c)組織診(主に顕微鏡下で診断を下す病理医の判定)と3つの過程を経ます。つまりそれぞれの段階で異なる立場の専門科がチェックをする訳ですから正確性は高いと考えられます。
ただ大切な自分の健康に関する事ですから、全て医師の言葉をうのみにせず少しでも疑問の点があったら説明を求める事です。 またセカンド・オピニオンと言って他の医師の見解を求める事も最近では行われるようになってきております。
次に子宮体癌の検診ですが、子宮頚癌と同じように(a)細胞診 (b)組織診が行われます。ただ膣拡大鏡診は行われず代わりに(c)子宮鏡検査といって子宮の内腔を内視鏡で見る事も時にあるようになりました。
これらの検査も正確度が高いと考えられています。
(2) これに対して卵巣癌の検診は今のところ子宮癌程正確性はありません。
ただ卵巣癌はこの所増えている事、何か自覚的な症状が表れて来院された時には進行した癌である事が多いことなどから、子宮癌検診をうけられたついでに検診をうけておく事はそれなりに意味があると考えらます。
(3)これらの事から当院では婦人科の癌検診を積極的にうける事をおすすめしています。
ただ、がん検診はどこの部分の癌検診でもある程度信頼できても100%というものではありません。
たとえば子宮頸がん検診でも、異常なしと言われても僅かですが見落としがあるとされています。
この点には注意が必要と言えます。
このような状態になるのを防ぐには
(1)定期的な検診を受ける。
(2)何か心配な症状があったら(たとえば、不正出血・おりもの・腹痛など)、検査を
受けているからと言って安心せず、婦人科の検診を積極的にうける事をおすすめ
します。
(3)子宮頚がん検診については、HPV(ヒト・パピロース・ウイルス)の検査を受ける
と、信頼度は飛躍的に高まります。
子宮頚がんはHPV 感染が原因である事が分かってきました。それと同時に、診断方法や治療方法も少しずつ変ってきています。
ここでは、子宮頚がんについて基本的な情報、新しい情報をお伝えしたいと思います。
■最近の特徴からどんな事をしたら良いでしょう。
の3種類があります。
■細胞診検査
1.検査方法
子宮の出口の所のがんの出来やすい部分を綿棒やヘラでこすりとり検査します。
ガラスの板に採取した細胞をこすりつけた後、染色して顕微鏡でそれぞれの細胞の顔つきを検査します。
※細胞の検査は細胞検査の専門家が判断します。
結果大きく分けてクラスⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴの5段階に分かれます。
このうちⅢはさらにⅢaとⅢbに分かれます。
これらがどんな意味があるか少し詳しく説明すると次のようになります。
2.細胞診の検査は次のように出来ます。
クラス分類 | |||
Ⅰ | 異常ありません | 全く異常な細胞が出ていません。1年後の検診で結構です。 | |
Ⅱ | 基本的に異常はないのですが、炎症があったりホルモンのバランスがくずれて少し活動力のある細胞が出る事があります。多くは念のため6ヵ月後の検診がすすめられます。 | ||
Ⅲ | Ⅲa | 気をつけて | 現在がんが疑われる状態ではありませんが、やや活動力が出ている細胞が出ており、少し異型性が出てきた細胞と考えられる状態です。医師の指示に従い定期的な検診をすすめられます。自然にⅡやⅠになる事もありますが、いつもⅢaであれば精密検査をすすめられる時があります。 |
Ⅲb | がんではないものの将来がんになる可能性もある細胞と言えます。現在の所この状態の方は約20%が将来初期の癌になる可能性があると考えられています。精密検査をすすめられるのが普通です。 | ||
Ⅳ | がんの疑いあるいはがんと考えられる | 初期のがんが疑われます。 | |
Ⅴ | 進行したがんが疑われる状態です。 |
※さらに細かくクラスⅡがⅡとⅡb(あるいはⅡR)に分けられる時があります。
クラスⅡb(あるいはⅡR)は基本的にはクラスⅡの範囲ですから良性と考えられる細胞が出ている状態です。
ただ何らかの膣内の炎症があったり、ホルモンのバランスのくずれがあると、新陳代謝が盛んで活動力のある細胞が出てきて、Ⅲaの細胞と区別しにくい細胞が出てくる時があり、これをⅡb(あるいはⅡR)としています。
念のため3ヶ月とか6ヶ月後に再検査をすすめられる時が多いのですが、殆どがクラスⅡ以下に戻ります。
※活動力のある細胞って何でしょう。
身体のどの部分でも新陳代謝がすすみ、古い組織がはがれ、新しい組織にかわると、新しい組織は若々しく元気のよい(活動力のある)細胞の形で出てきます。
これを顕微鏡下で観察すると、若々しさがそのまま観察されます。
しかし元々Ⅰ、Ⅱのグループの良性の若々しい細胞と、Ⅲa以上の要注意の細胞では同じ若々しい活動力のある細胞でも、その形で明らかに区別が可能です。この段階で顕微鏡観察の専門家は良性と、そうでないものの区別を容易に判定するのです。
勿論ⅣやⅤの時の細胞も区別が可能です。
■膣拡大鏡診
子宮の出口の癌の出来やすい部分を拡大鏡で観察します。 検査の時は痛くはありません。
※膣拡大鏡診の時はトレーニングをうけた医師が行うのが普通です。
■組織検査
これを先の細胞診の結果と比べてみると大たい下の図のような関係になります。
細胞診 | クラス | クラス | クラス | |||
Ⅰ | Ⅱ | Ⅲa | Ⅲb | Ⅳ | Ⅴ | |
組織診 | 異常なし | 軽度 中度 異形成上皮 | 高度 異形成上皮 | 癌 | ||
初期癌 | 進行癌 |
※がん検診には3つの専門家集団が検査に関ります
子宮頚癌取扱 規約分類 | 正常 | 異形成上皮(dysplasia) | 上皮内癌 (CIS) | ||
軽度 | 中等度 | 高度 | |||
CIN分類 | 正常 | 1 | 2 | 3 |
CINというのはCervical Intraepithelial Neoplasia の略です。
従来から日本で使用され、一般的になっている異形成上皮(今癌ではないが、軽度~高度に従って将来癌になる可能性に差のある上皮異常)と比べて
同じなのは、
CIN-1は軽度異形成上皮
CIN-2は中等度異形成上皮
違うのは、CIN-3が高度異形成上皮と上皮内癌を合わせた状態を言います。
これには高度異形成上皮と上皮内癌が生物学的には非常に似たものであるという認識があるのかも知れません。
ベセスダシステムの御紹介
新しいがん検診の診断基準が出来ました。
子宮がんやその前の状態と考えられる状態(異型成上皮)がHPVというウイルスが原因と考えられるようになったため、子宮がん検診の新しい分類方法が採用されました。これをベセスダシステムといいます。
ベセスダシステムの考え方(分類方法)
結果 | NILM | ASC-US (アスカス) | ASC-H (アスカス-ハイ) | LSIL | HSIL | SCC |
日本語の意味 | 陰性 | 意義不明な異型扁平上皮細胞 | HSILを除外できない異型扁平上皮細胞 | 軽度扁平上皮内病変 | 高度扁平上皮内病変 | 扁平上皮癌 |
推定される顕微鏡レベルの異常 | 腫瘍性の異常はない。炎症のある時がある。 | 軽い扁平上皮内病変の疑い | 高度の扁平上皮病変の疑い | HPV感染軽度異形成 | 中等度異形成~微少浸潤癌の疑い | 扁平上皮癌 |
従来のクラス分類 | Ⅰ、Ⅱ | Ⅱ~Ⅲa | Ⅲa~Ⅲb | Ⅲa | Ⅲa、Ⅲb、Ⅳ、Ⅴ | Ⅴ |
これらの結果が出た時は場合によりHPV検査をすすめられる事があります。検査をうける意義、メリット等については医師と相談しましょう。
なお、新しい分類システムですが、今までの分類から急にかわると検診をうけていた方が混乱する事があります。
このためしばらくは両方の分類を合わせてお伝えする場合や、以前の通りでお伝えする場合もあります。
子宮がんの検診では(他の部分のがん検診もほぼ同じですが)
細胞診検査 細胞をみる専門家
膣拡大鏡診 トレーニングをつんだ婦人科医
組織検査 病理診断医
の3つの部門でそれぞれの専門家が独立して判断をするシステムになっています。それぞれの部門で(3つの部門で)チェックを行い間違いをそれだけ少なくしようという働きがあります。
ベセスダシステムについて 詳しくは
レディースケアネット:ベセスダ分類
こちらをご覧下さい。
子宮頚がんには [1]扁平上皮がん と [2]腺がん があります。
数は扁平上皮がんの方が多いのですが腺がんの方も少なくありません(子宮頚がんの15%-20%の方が腺がんです)。この見分け方は癌の部分を1部切りとって検査を行って判断します。
現在の所子宮頚がんの原因になる可能性のあるパピローマウイルスは100種類以上ある事が分かっています。
この中で将来癌になる可能性のあるハイリスクグループと、それだけでは癌になる可能性のないローリスクグループに分かれると考えられています。
最近このパピローマウイルスの感染があるか、ハイリスクかローリスクかが分かる様になりました。
またどのタイプ(タイピングと言います)であるかという、より詳しい検査も可能となってきました。
現在の所、ヒトパピローマウイルス検査(HPV検査)の検出の感度はとても高いと考えられています。
一方で癌検診の最初のステップである細胞診検査は100%の精度をもつものではありません。このため、この2つの検査が同時に出来れば癌検診としては大きな力になるのは分かっているのですが、今の所幾つかの問題点があります。
◆HPVウイルスとワクチン
①はじめに
HPV(ヒトパピローマウイルス)は今膣内に約40種類位感染する可能性があると考えられています。
この中で将来がんになる可能性のあるハイリスクと考えられているウイルスがいます。
なかでも16型と18型は悪性になる可能性が高いと考えられています。
欧米では、16型・18型が多く
日本では、16型・31型・58型などが多いと考えられていますが、日本でも若い女性を中心に18型が増えてきているようです。
②現在考えられている子宮頚がん関連HPVの型
16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68、69、73、82型など
③検査法と費用
幾つかの検査法があります。
細胞診検査という子宮がん検診と同じ方法で行われる事が一般的です。
1. 検査の結果
・結果が、16型・18型など型が出てくる検査法があります。
・型は出ないものの、ハイリスクかローリスクかが分かる方法があります。
・その中間のタイプがあります。
2. 費用は検査法によって違います。HPV感染があるかどうかだけを調べるのでは、保険が効きません。しかし細胞診+組織検査を行った後での、検査の結果によっては保険が効く場合があります。
これらについては担当医が相談にのってくれるでしょう。
④HPV検査結果が出たらどうしたら良いでしょう。
1. ハイリスクの中でも16型や18型が出た場合は要注意です。
今、細胞診検査の結果、クラス分類でⅢaやⅢb、ベセスダ分類でLSILやHSIL、組織検査で軽~高度異形成上皮が出ている場合は、何らかの治療がすすめられたり、慎重な経過観察がすすめられる時があります。
今細胞診等の検査で異常が出ていなくても、HPV陽性の時は専門医のアドバイスを聞く事が大切です。
2. 16型や18型以外のハイリスクでも、今細胞診、コルポ診、組織診で異常が出ている人は、やはり専門医との相談が必要です。
特に、31,33,35,45,52,58型の人は注意しましょう。
3. ローリスクであっても、細胞診に異常が出ている時は安心してはいけません。医師のアドバイス通り、定期的な通院が必要です。
4. 今のところ、初期のがんになった人でも100%HPVが検出出来ている訳ではありません。
まだ未知のHPVがいたり、別の原因でがんになる可能性が完全にOとは言えません。このため今までの癌検診は必要と考えた方が良いでしょう。
5. 但しがん検診にHPV検査を併せて行うと検診の正確度が極めて高くなると考えられています(因みに日本の細胞診検査の精度は高いのですが、外国では50%位の精度しかないという調査があります。これにHPV検査を加えると100%近くになるという調査があります)
6. HPV感染が2種類以上ある時、特にハイリスクが2種類以上ある時はより注意が必要と考えられるようです。
⑤ワクチンの内容
ワクチンには2種類あります。
1. サーバリックス®とガーダシル®です。
この2つのワクチンについては簡単な比較をすると次の通りです。
サーバリックス | ガーダシル | |
予防するHPVの型 | 16、18 | 16、18、6※1、11※1、 |
投与する時期 | 初回、1ヶ月後、6ヶ月後(初回から) | 初回、2ヶ月後、6ヶ月後(初回から) |
アジュバント※2 | ASO4 | アルミニウムヒドロキシホスフェイト |
有効期間 | ⑥を参考にして下さい。 なお、担当医とも御相談下さい。 |
※1 6型と11型は、子宮頸がんになるタイプではありません。
6型と11型は、主に外陰部に出来る尖圭コンジローマという病気の原因になります。
※2 アジュバントというのは、抗ウイルス作用を強め、長期間作用を維持するために使用されます。
⑥ワクチンはどの位効いているのでしょうか。
ワクチンが使用され始めて8年以上経過していますが、今のところ効果が持続していると考えられています。
また、研究者によるデータではもっと長期間の効果の持続が推測されていますが、どれだけ持続するかは、直接担当医とお話をしておいた方が良いと思います。
⑦費用はどの位かかるでしょうか。
今の所このワクチンは自費治療です。
3回合わせて数万円(5万~6万円)かと考えられていますが、ワクチンを投与している病院に予め問い合わせた方が良いでしょう。
⑧HPV16型、18型の人にもワクチンを投与する意義はあるでしょうか。
HPV16型と18型の人に効果のあるワクチンですから、16型や18型に既に感染している人には理論的には直接の予防効果がありません。
また、ウイルスが一度消失した場合(自然、手術後など)にワクチンを接種し、再感染を予防しようという考えがあります。
これをcatch up接種といいます。
⑨このワクチンは他のHPVには効かないのですか。
HPVウイルスは似たような性格をもったタイプがあります。
このため16型、18型を対象としたワクチンでも、他のタイプに効果があると考えられています。しかし16型、18型を完全に抑え込む程の力はもっていないようです。
⑩妊娠中のワクチン投与は-1-
妊娠中のワクチンの接種は認められていません。まだ副作用のデータが集められていないからです。
⑪妊娠中のワクチン投与は-2-
子官頚がん予防のために、HPVワクチン投与をする事が広がりつつあります。
日本でも諸外国にならって、地方自治体で公費による小中学生のワクチン投与が始まっています。
さて、このワクチンは妊娠中の投与は勧められていません。
アメリカのFDA(食品や薬剤の安全性に関する専門機関)では、カテゴリーBに分類されています。
これは、動物実験では胎児に異常を起こす事はないけれど、人間では実験が行われていないという意味です。
最近アメリカの産婦人科専門雑誌OB-GYに相次いで妊娠中のHPVワクチンの影響についての論文が出ました。
ワクチン投与中に妊娠と分かった人517人を調べた調査では、①自然流産の比率も②胎児奇形の比率 もワクチンを投与しなかった人達に比べて差はなかったそうです。
またワクチンの効果や副作用についての試験を行っていた時の調査では、ワクチンを投与中に1796名の人が妊娠したそうですが、やはり自然流産率、胎児死亡率、奇形率に差がなかったそうです。
|
ただし、これらの数だけでは、まだ結論的な事は言えないとの事です。
妊娠中に使用した経験がもっと集まらなければ、科学的な証明とは言えないからです。
今の所、
1. 妊娠中のワクチンの投与は勧められないという事は変わらないようです。 2. また3回目のワクチン投与後1ケ月間は妊娠しない方が良いとされています。 3. しかしもし妊娠した時は、妊娠中絶をしなければならない理由はないとされ、この事は日本の産婦人科の専門医の会でも確認されています(日本産婦人科医会)。 |
⑫男性のワクチン投与は
今のところワクチン投与の対象は女性だけで、男性への投与は考えられていません。
⑬ワクチンが出来た以上、HPVの治療薬は出来ないのですか。
ウイルス性の病気に対する、抗ウイルス剤はいろいろな病気に対して開発されています。
例えば、尖圭コンジローマ、ヘルペス等々です。
HPVに対する抗ウイルス剤も研究中のようですが、今の所まだ完成していないようです。
⑭HPVワクチンについての幾つかの質問
1. どんな人が対象になるか。
2. 子宮がん全部に効くのか。
3. ワクチンを使ったら、もう子宮がんにならないのか。
4、 今後の子宮がんの検診はどうしたら良いか
等、質問が沢山あると思います。
なお詳しくは担当医からの説明をうける事をおすすめします。
⑮ワクチンの副作用について幾つかあげておきましょう。
1. 注射直後におこる症状
a)痛みを感じる人が多いようです(80%位の人と言われております)
b)腫れ、発赤
c)注射した部分のピリピリ感、むずむず感が出る事もあります。
2. 注射後からしばらくして出てくる症状
a)発熱 風邪のような症状
b)頭痛 めまい
c)発疹 蕁麻疹様の症状が出る事があります(1-10%位)
3. 注射後の強い副作用に息切れ、息苦しさ、動悸や失神等の症状が出た人も僅かにいたそうです。これらの症状は担当医が速やかに処置してくれます。
4. なお、このため接種後30分位は病院で何も起こらない事を確認してから帰宅する事がすすめられています。
5. 副作用についての情報は、詳しくは各製品のホームページをご覧下さい。
■ HPVワクチンは2種類が使用可能になりました。
1つは「サーバリックス」というワクチンです。
1.どんな人が対象になるか。
2.子宮がん全部に効くのか。
3.ワクチンを使ったら、もう子宮がんにならないのか。
4.今後の子宮がんの検診はどうしたら良いか
等、質問が沢山あると思います。
ワクチンには2種類あります。
1. サーバリックス®とガーダシル®です。
この2つのワクチンについては簡単な比較をすると次の通りです。
サーバリックス | ガーダシル | |
予防するHPVの型 | 16、18 | 16、18、6※1、11※1、 |
投与する時期 | 初回、1ヶ月後、6ヶ月後(初回から) | 初回、2ヶ月後、6ヶ月後(初回から) |
アジュバント※2 | ASO4 | アルミニウムヒドロキシホスフェイト |
※1 6型と11型は、子宮頸がんになるタイプではありません。
6型と11型は、主に外陰部に出来る尖圭コンジローマという病気の原因になります。
※2 アジュバントというのは、抗ウイルス作用を強め、長期間作用を維持するために使用されます。
今回は副作用の注意点を幾つかあげておきましょう。
1)・かゆみ、注射部の腫れ、痛み
・吐き気、腹痛、下痢などの胃腸症状
・筋肉痛、関節痛、頭痛、疲労感などが10%以上の人に起るという使用前調査があります。
2) 発疹、蕁麻疹、発熱、喉の風邪のような症状が出る可能性もあるそうです。
1~10%位だそうです。
3) 注射した部分のピリピリ感、ムズムズ感などの症状が出る人も少数いたそうです
0.1~1%未満
4) 息切れ、息苦しい、動悸、失神等の症状が出た人も僅かにいたそうです。
このためワクチン接種後30分位は、病院で何も起こらない事を確認してから帰宅する事がすすめられています。
■ もう1つのワクチン「ガーダシル」も似たような副作用が指摘されています。
1)注射部の痛み、発赤、腫れ、かゆみがあった他、頻度は少なかったものの、出血や不快感もあったそうです。
2)漸進的な症状として、発熱(5.7%)、頭痛(3.7%)、倦怠感(1.2%)、四肢の痛み(0.5%)の他、腹痛(0.4%)、下痢(0.4%)、吐気(0.4%)などの胃腸症状が指摘されています。
3)1週間位経って痛みや、痒み、腫れの症状が出たり、蕁麻疹や眠たくなった、鼻閉や鼻水等の鼻の症状が出る時もあるそうです。
■ なお最近ワクチン投与後の失神が問題になっております。
製薬会社から、ワクチンを投与する医師に注意情報が出ております。
医師の側から注意事項の説明があったり、注射後の経過の観察があると思いますが、帰宅後心配な事があった時は医師に連絡しましょう。
a)癌が実際どの程度進行しているか判断をうける事が大切です。
癌の進行期分類と前に述べました細胞診検査のクラス分類(Ⅰ~Ⅴ)を間違えられる方がおられます。細胞診のクラスⅡといったら癌の2期とは違いますので御注意を。
b)癌の進行はどのように分類されるのでしょうか。>
進行度分類といいます。
癌の進行の程度を顕微鏡による検査や婦人科診察、MRIやX線検査などで判断します。
子宮頚がんは初期の段階でみつかる方が多いので、ここでは0期とⅠ期のがんについて詳しくみてみましょう。
これらの治療は1がんがどの程度進行しているか、2何か大きな合併症がないか、3特殊なタイプのがんで治療法に制限があるものではないか、4赤ちゃんを望んでいるか などを考えて決定されます。治療法の決定には医師から詳しくお話があるのが普通です。治療をうける側としてはその内容がよく理解できるまでお話を聞く事が大切です。
a)手術療法
※リンパ腺郭清術
がんの進行の程度によってはリンパ腺の切除が必要になります。
リンパ腺の切除の範囲は転移の程度により変わります。
b)放射線治療法
放射線療法は最近非常に良い治療効果が得られるようになってきました。
以前は手術が出来ない程進行した方や、高齢者で手術が不可能な方にこの治療を行うというイメージでしたが、最近はより積極的に使用がすすめられるようになってきております。
放射線治療がすすめられる時は、婦人科医の他、放射線専門医から詳しくお話があるのが普通です。
c)抗がん剤治療
進行度が進み手術の対象にならなくなったり、放射線あたる部分以上に広がった方に用いる方法です。
また再発された方で抗がん剤治療、あるいは抗がん剤+放射線治療で完全に治ったと判断される方も出ており、明らかに効果的な治療法と考えられるようになってきました。
d)手術と放射線
手術と抗癌剤などの組み合わせがすすめられる等いろいろな治療法が考えられています。
子宮頚部腺がんは最近増えてきています。
子宮頚がんは、扁平上皮がんという癌と腺癌に分かれますが(正確にはこの他にもあります)この扁平上皮がんと腺がんの割合が変わりつつあります。
具体的には1960年代には子宮頚がんのうち腺がんが4%位でした。1993年のデータでは14%でした。最近は約20%と言われています。このように腺がんの人が多くなっているのですが、扁平上皮がんの様にまだ研究や調査が進んでいません。
しかし少しづつ腺がんも対策がとられるようになってきております。
(A)頚部腺がんの問題点
(B)頚部腺がんの分類
はじめに
子宮体がんは子宮がん全体の40%を占めています。1970年代は子宮がん全体の10%でした。また欧米では子宮がん全体の50%か、それをこす状態になっているのではないかと考えられています。
さらに最近問題になているのは、若い女性にも子宮体がんが増えてきた事です。
これらの原因には、いろいろな事が考えらています。
①欧米型の食事が関係している。(乳がんや大腸がんが増えているのも、その為とも考えられています)
②環境ホルモンやダイオキシン等の社会的な環境が関係しているという説もあります。
③晩婚や、少子化が関係している等という考えもあります。
一方で子宮体がんに関する関心が高くなった事から、検診を受ける人が増えてきたという側面があります。
しかし、まずは検診をうけなければ意味がありません。
子宮体がんに関しても、積極的に検診をうける事をおすすめします。
子宮体がんの検診方法
子宮体がんの検診方法は幾つかあります。
1.超音波検査
2.細胞診検査
3.子宮内膜組織検査
4.子宮内視鏡検査(子宮鏡検査)
実際には2と3がメインの検査になります。
1.超音波検査
不正出血など、何らかの異常症状があって婦人科を受診する事が多いため、まず超音波検査をうける事が殆どです。
その際、子宮内膜(超音波で子宮の真ん中付近で白く見える所)が、異常に厚かったり、形がおかしかったりすると注意が必要な時があります。
しかし、子宮内膜は当然月経周期によって厚くなったり、薄くなったりします。
子宮内膜について、何らかの検査をした方が良いという目安にはなりますが、この状態だけで異常を推定する事は困難な事が多いようです。
2.細胞診検査
子宮の中に検査の器具を入れて、子宮の内面の細胞をとり顕微鏡で検査を行うものです。
子宮の中にブラシのついた検査器具などを入れ、表面の細胞の検査をします。
細胞診の結果は次のように出ます。
医学的には子宮体がんの検査結果は子宮頚がんと異なり、クラス分類では出ないのが普通ですが、説明するには便利ですので、この分類が使われる事が多いようです。
クラス分類
Ⅰ | 異常ありません | 全く異常な細胞が出ていません。 | |
Ⅱ | 基本的には異常がないのですが、ホルモンバランスのくずれがあったり、避妊リングが入っていたりすると、時にやや活発な活動を示す細胞が出る時があります。将来癌細胞にかわる訳ではありませんが、念のため6ヶ月後の再検査をすすめられる事が多いようです。 | ||
Ⅲ | Ⅲa | 気をつけて | 現在がんが疑われる細胞ではありませんが、良性細胞と言い切れないもの。ホルモンバランスのくずれがやや強く、放置しておくと不正出血の原因になり得るような細胞が出ているような状態を言います。定期的な検診や、この時点で子宮内膜の組織検査をすすめられる時があります。組織検査でいう子宮内膜増殖症が出るような状態が考えられます。 |
Ⅲb | Ⅲaに比べやや細胞の形に異型性が出るものを言います。がん細胞とは考えられませんが、子宮内の組織検査をうける事が望ましいと考えられます。また定期的なチェックが必要となります。組織的には子宮内膜異型増殖症が疑われるような細胞です。 | ||
Ⅳ | がんの疑いあるいはがんと考えられる | 初期のがんが疑われます。 | |
ⅴ | 進行したがんが疑われる状態です。 |
3.子宮内膜組織検査
子宮の内側(内膣といいます)の組織を切り取ってくるものです。
切り取り方によっては痛みがあるため、麻酔をかけて検査をすすめられる時もあります。
これらについては担当医からお話があるのが普通です。
結果はだいたい、次の通り出てきます。
■異常なし
■子宮内膜増殖症
①単純型
子宮内膜増殖症 / 異型子宮内膜増殖症
②複雑型
子宮内膜増殖症 / 異型子宮内膜増殖症
※①と②は顕微鏡で見た子宮内膜症の型で診断されます。
※これにそれぞれ異常度が強いと、異型という名称がつきます。
※このうち、単純型の異型子宮内膜症は将来 約 10% 弱で子宮体がんになる可能性
複雑型の異型子宮内膜症は将来 約 30%の確立で子宮体がんになる可能性があるとされています。
■子宮体がん
4.子宮内視鏡検査(子宮鏡検査)
子宮の中、子宮体がんができやすいところを内視鏡で見る検査法です。
子宮内膜組織検査で同じ検査効果があるとも言われています。
子宮体がんになり易いタイプ
どうやら子宮体がんになり易いタイプをいう人がいる様です。
1.妊娠・分娩の経験がない人
2.授乳経験がない人
3.高血圧・糖尿病、肥満のある人
4.肥満のある人で閉経が早い人
子宮内膜増殖症や子宮体がんと言われたら
担当の先生と詳しくお話する事が大切です。
症状に応じて、経過をみるだけ、ホルモン療法を受けたほうが良い時、手術が必要な時さまざまです。
※レディースケアネット(当院は監修しているサポートクリニックの1つです)婦人科の病気:子宮がんも参考にされると良いでしょう。
はじめに
最近の卵巣癌にはいくつかの注目すべき特徴があります。卵巣癌は以前は欧米に比べて日本人に少ない癌と言われてきました。 しかしこれが現在増えてきております。 もともと卵巣癌はSilent Tumor(沈黙する腫瘍)といって、ある程度大きくなる迄は自覚的症状がないものが多く、気がついた時は進行していたという事が多いものです。このため気がついた時は約60%の方が進行癌であると言われております。それだけにこの癌が増えてきているという事は注意が必要です。
厚生省の統計をみると1968年の卵巣癌の死亡者数が1063人だったものが1995年には3892人と約4倍になっております。 当然癌に罹った方もこれに比例して増加している事が推測されます。
最近の推定では年間約8000人の人が卵巣がんになっており、約4500人の人が亡くなっているという事です。
欧米では最近女性は一生涯のうち70人に1人の割合で卵巣癌にかかると言われております。日本でもこれから猶しばらくの間は卵巣癌が増えていくと考えられます。
もう一つの特徴が良性腫瘍と考えられていた腫瘍でも将来の癌化が考えられるという事です。決して患者さんの数は多くありませんが気をつけなければいけない問題です。
こうした事に対するわれわれの側の対応と言うと、これは検診をしっかりうける事と言えるでしょう。卵巣癌はその気になれば早期に発見する事も出来ます。そして早期に発見出来れば治る確率が高い病気です。きちんと診察をうける事が大切です。
卵巣がんの検診
1 超音波検査
2 主要マーカー
3 MRI、CT、PETなど映像による検査 などがあります。
※卵巣がんの検診は、今のところ子宮がん検診ほど正確ではありません。
当院での卵巣癌検診は超音波検査で卵巣の大きさのチェックをしております。卵巣の直系が最大35mm以上(医師によっては30mm以上)の時は要注意とし、定期的な通 院をおすすめ致しております。猶卵巣が大きい時は、その内容もチェックの対象となります。
病院によっては腫瘍マーカーといって血液検査を行う所もあります。
最近米国のある施設で行われている検査(スクリーニング)について少し御紹介しましょう。
なお、卵巣癌検査については、その検査内容、費用とも各施設で様々です。予めお問い合わせしておくことも大切です。