子宮筋腫・子宮内膜症
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子宮内膜症

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子宮内膜症とは

最近子宮内膜症という病気が増えてきていると言われております。
正確な統計はありませんが、子宮内膜症は大よそ女性に10人に1人の割合でおこるという考えがあり、最近少しずつ増えてきている可能性があります。
原因はまだはっきりとしてはいませんが、何らかの形で女性ホルモン、環境ホルモン、ライフスタイル、多忙な仕事など、子宮内膜症に影響を与えている要素があると考えられています。
生理が出てくる年令から閉経に至るまでは子宮内膜症が発生する可能性があります。
中学生から、手術を必要とする程の子宮内膜症の方が見つかっていますから、若いからといって油断してはいけません。生理痛が強いなど、子宮内膜症が疑われる症状がある時は診察をうけたり相談する事が大切でしょう。

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子宮内膜症はなぜ注意が必要なのでしょうか。

  1. 子宮内膜症は基本的に進行する病気と考えられています。
    程度に差はありますが ①生理痛 ②月経量の増加 ③月経期間の延長
    ④生理の時以外の痛み ⑤セックスの時の痛み 等の
    子宮内膜症の症状が進行する時があります。
  2. 放置しておくと不妊症の原因になる可能性があるとの考えがあります。
  3. 数は少ないものの卵巣に出来た子宮内膜症は、将来悪性化する可能性があるとの考えもあります。

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子宮内膜症はどうして出来るのでしょうか。

子宮内膜症と診断をうけられた方によくどうして子宮内膜症になるのでしょうかと聞かれます。実は子宮内膜症がどうして出来るのか、その原因はまだはっきりとはしておりません。今のところ2つの有力な考えがあります。


  1. 月経の時の血液が子宮から卵管を通ってお腹の中に逆流し、一緒に流れた子宮内膜の組織が子宮外に植えつけられ発育して子宮内膜症になるという説があります。
  2. 赤ちゃん(胎児)の身体の中には、将来大人になってからお腹の中の組織である腹膜になる部分があります。しかし大人になっても胎児の組織がそのまま残ってしまう人がおり、その胎児の時の組織が子宮内膜組織にかわって子宮内膜症になるという説があります。

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子宮内膜症にはどんな種類があるのでしょうか。


  1. 子宮自体に子宮内膜症が出来たもの
    内性子宮内膜症という時があります。子宮全体が大きくなります。現在は子宮腺筋症といって独立した病気であるという考えがあります。
  2. 子宮以外に子宮内膜症が出来たもの
    外性子宮内膜症という時があります。

    1. 卵巣に出来て大きくなった時
      中に出血がたまるタイプを卵巣チョコレートのう腫といいます。
    2. 子宮や卵巣以外の所に子宮内膜症が出来る事があります。これを異所性子宮内膜症という時があります。それでも子宮や卵巣の近くに出来る事が殆どです。
    3. しかし子宮や卵巣と全く離れた所に出来る時があります。
      例えば肺…咳をすると月経の時に血痰が出る
      帝王切開の傷跡…月経の時傷跡から出血する時がある  など。

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症状

  1. 月経痛

    月経痛が強いのがこの病気の特徴です。痛みの程度は軽いものから強度なものまでいろいろあります。救急車で病院に運ばれる方もいる程です。またこの痛みは月経の時だけでなく月経の前や、むしろ月経が終わってから出てくる方もおられます。また月経と無関係の痛みがある時もあります。

  2. 過多月経

    子宮全体が大きくなるため、子宮筋腫と同じように月経量が多くなる事があります。
    また月経が長く続く時もあります。

  3. セックスの時の痛み

    子宮内膜症の出来てる場所によってはセックスの時の痛みが強い時もあります。

  4. 不妊症

    赤ちゃんがなかなか出来なくて検診をうけると、子宮内膜症が見つかる時があります。
    逆に言うと子宮内膜症(特に重症のタイプの方)は不妊の原因になる時があります。
    もちろんいろいろな治療法があります。

  5. 月経前後の不快感

    必ずしも子宮内膜症だけが原因とは言えませんが、月経前や月経開始とともに、不快感や気分の変調が認められる時があります。

  6. 特別な症状

    子宮内膜症の出来る場所によりますが(異所性子宮内膜症)、膀胱に子宮内膜症が出来ると血尿、肺にできると血痰、腸に出来ると血便などの症状が出る事があります。

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診断

  1. 月経痛や過多月経などの子宮内膜症が疑われる症状があるか(自覚症状といいます)。
  2. 内診などの婦人科診療で子宮の大きさや卵巣のはれの有無、圧迫されて痛い所がないか等の検診が大切です。
    コラム 若い方でも月経痛などの子宮内膜症が疑われる症状のある方がおられます。 内診などの婦人科独特の検査が必ず必要と言う訳ではありません。内診をうけたくない方は予め医師にその旨伝えておくと良いでしょう。
  3. 超音波検査
    お腹の上からみる超音波と膣の方からみる超音波があります。膣の方からみる方が細い所がよく分かります。
  4. 血液検査
    腫瘍マーカーといって血液中CA125・CA19‐9・CA72‐4といった値が高くなる事があります。
    1. 保険が効くのはCA125のみです。
    2. 月経中はこれらの値が高くなる時があり、この時期検査をさけるのが普通です。検査を受けるタイミングが大切ですね。
    3. この値が低いからといって子宮内膜症ではないという事にはなりません。
      例えば子宮内膜症=CA125高値 では無いという事です。
      明らかな子宮内膜症の時でもこの値が低い時があります。
    4. MRIあるいはCT検査
      これらの検査で詳しい状態が分かります。
      CT検査は若い女性は気をつけましょう。
      CT検査はx‐線を用いた検査法ですがx線の被爆量は少なくありません。卵巣にかかる可能性のあるx‐線はなるべく避けるようにした方が良いと考えられます。
      MRI検査はその心配がありません。また知り得る情報量はMRI検査の方が多く、有効です。
    5. 腹腔鏡検査
      腹腔鏡と言ってお腹の中を細いカメラで観察する事を勧められる時があります。
      異常がみつかった時は検査の際治療をうける事も可能です。
      • 不妊症の方でこの腹腔鏡の検査をすすめられる時があります。この時何も症状の無い方でも約50%の方で子宮内膜症が見つかると言われております。
        さらにこの時治療をうけると、妊娠率が上がると考えられています。
      • 腹腔鏡の検査や治療は広く行われていますが、危険な点がないか、起るとしたらどんな副作用があるか等、医師からお話があるのが普通です。
        検査の目的、どんなメリットがあるかを含めてよくお話をしておきましょう。

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病気の進行度

子宮内膜症は良性の病気ですが、少しずつ進行する病気です。症状の進行する程度によって自分で感じる症状が重く感じてきたり、治療法が変わってきたりします。現在の症状がどの程度の状態かを知る事は大切な事です。
現在病症の進行度について、実際の医療の場では幾つかの分類方法が考えられています。その代表的なものをあげておきましょう。


1.ビーチャムの分類(Beecham C.T.Obstet Gynecol 28:437、1966)
診察により分類される方法です。この為自分の症状がどの程度か比較的分かりやすいといえます。

Beecham分類
stage1散在性の1‐2mmの内膜症小斑点を骨盤内にみる。
開腹時に初めて診断される。
stage2仙骨子宮靭帯、広靭帯、子宮頚部、卵巣が一緒に、あるいは別々に固着し、圧痛、硬結を生じ、軽度に腫大している。
stage3第Ⅱ期と同じだが、少なくとも卵巣が正常の2倍以上に腫大している。仙骨子宮靭帯、直腸、付属器は癒合し一塊となっている。ダグラス窩は消失している。
stage4広範囲に及び、骨盤内臓器は内診でははっきりと区別できない。

2.杉本の分類(杉本 修ら 産婦人科の実際 23:811,1974)
腹腔鏡の検査によって分類される方法で理解されやすい分類方法です。

杉本の分類(腹腔鏡による)
第Ⅰ期癒着が全くないか、あっても軽度で、ダグラス窩は健全で、主に付属器部分に病巣が認められるもの
Beechamの第1期、第2期に相当する
第2期卵巣の腫大、癒着やダグラス窩閉塞によって癒着性子宮後屈を伴うもの
第3期内性器上方が膜様癒着で覆われ、子宮後壁や付属器を精査できないもの。その最たるものはfrozen pelvisと称される症例である。

3.r-AFS分類
このほか、いくつかの診断法があります。その中でも代表的なものが、〔r-AFS分類〕(米国不妊学会による分類方法)です。
この分類法は、腹腔鏡や開腹手術でお腹の中を診察した上で、子宮内膜症の“全体像”ではなく、“部位別”に症状を評価点数化します。
例えば「左の卵巣の半分が強固に癒着=3ポイント」というように、部位別に症状の重さをポイント化し、この合計点数により症状の重さを4段階に分類するというものです。

ステージⅠ1~5ポイント微症
ステージⅡ6~15ポイント軽症
ステージⅢ16~40ポイント中等症
ステージⅣ41ポイント~重症

ただ、r-AFS分類は腹腔鏡や開腹手術などで診断をするため、腹腔鏡検査を受けた方には大変役に立つ方法ですが、今のところ日本では、内診で診断することができるビーチャム分類のほうが、進行の診断に使われることが多いようです。

最近よく用いられる分類です。
腹腔鏡の検査を行った上で、子宮や卵巣の状態を詳しく観察する方法です。検査が終わった後に主治医からお話があるでしょう。
不妊症の方は今後の妊娠の可能性をよく反映すると考えられます。
(American Society for Reproductive Medicine, Fertil steril 67:817,1997)

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治療~1.お薬による治療法

1.ホルモンの働きをコントロールする方法

子宮内膜症の主な症状は月経が来る事により悪化します。このため身体のホルモン状態を月経の来ない時に似た状態にすると症状が改善します。
ところで女性の一生の間で月経が来ないのは2回あります。
①妊娠した時と ②閉経になった時です。
このため子宮内膜症の治療の1つとして妊娠した状態に似たホルモン環境にする方法(偽妊娠治療といいます)と、偽閉経治療といって閉経の状態と似た状態にする方法があります。

  1. 妊娠した状態にする方法
    1. お薬の種類
      1. 黄体ホルモン剤を内服する方法 主にジドロゲステロン(デュファストン(商品名))という薬剤が使われます。
        代表的なのみ方は



        月経開始から14日目(2週間目)から14日間内服する方法と
        月経開始から7日目(1週間目)から21日間内服する方法があります。
      2. ピルを用いる方法
        黄体ホルモンと卵巣ホルモンが入った薬剤を内服する方法、低用量あるいは中用量ピルがこれにあたります。
        代表的なのみ方は



        このタイプのお薬はいろいろな内服の仕方があります。お薬の使用の仕方は子宮内膜症の症状やお薬の特性によりそれぞれ異なりますから、医師とよくお話をしましょう。
    2. お薬の特徴
      1. お薬を内服した後に月経が来ます。その分自然の月経周期に近く、若い方、症状の軽い方に向いていると言えるかも知れません。
      2. これらのお薬はいずれも内服している間は生理痛も軽くなり、月経量の減少や出血期間の短縮が期待出来ます。
      3. 更年期に似た症状にするお薬に比べると一般的に副作用も少なく、費用も安いと言えます。
      4. 子宮内膜症がこのお薬で消えてしまう事はあまりないと考えて良いでしょう。
    3. お薬の副作用
      1. ピルのタイプは長期間用いると乳癌の発生率が高くなるという研究があります。子宮内膜症の治療として用いる時は、何年にもわたるという事はあまりありませんから危険は少ないと考えられます。それでもこれまでに乳癌の疑いがあると言われた方、乳腺症があると言われた方は注意しましょう。
      2. 長期間用いると狭心症など心臓の血管に影響が出る事もあると言われています。もともと血圧が高い方、心臓の病気のある方は注意が必要です。
      3. タバコを吸う方はこのタイプのお薬とは相性がよくありません。これを機会に禁煙を考えられるのは如何でしょう。
      4. もともと女性ホルモン剤で発疹や薬剤アレルギーが出た事がある方は要注意です。
      5. 40才以上の方は慎重な内服が必要です。
      6. 肝臓の機能の異常や血液がかたまりやすくなる時があるとも言われています。時々の血液検査が必要です。
      7. その他幾つかの注意事項がある時があります。医師と相談しながら内服しなければいけないお薬です。
  2. 閉経と似た状態にする方法

    身体の中を閉経した時と似たような状態にして月経を起こさないようにする治療法です。ただしお薬の種類によっては月経をおこすホルモンの抑え方が弱いため、少ない出血が起る時もあります。

    1)お薬の種類
    a)注射薬 b)点鼻薬 c)内服薬があります。下の図のようにc)→a)と薬剤の効果も高くなりますが、副作用が強くなる時もあります。 症状の程度と副作用の可能性を考えてお薬が選択されます。





    1.
    a)注射薬1ヶ月に1回のお注射で効果が出ます。いろいろなお注射があります。
    ・酢酸リュープロレリン(リュープリン(商品名))
    ・酢酸ゴセリン(ゾラディックス(商品名))
    ・酢酸ブセレリン(スプレキュアMP(商品名))

    b)点鼻薬 鼻腔から点鼻するお薬です。 1日2回あるいは3回用いるのが普通です。アレルギー性鼻炎などで悩まれている方には向いていないかも知れません。

    ・酢酸ブセレリン(スプレキュア(商品名)、イトレリン(商品名))
    ・酢酸ナファレリン(ナサニール(商品名)、ナファレリール(商品名))

    c)内服薬 男性ホルモンを主体としたお薬です。1回に用いる量を少なくする事で比較的長期間使用する事も可能です。
    ホンゾール(ダナゾール(商品名)ダナンカプセル(商品名)など) 点鼻薬、内服薬などのお薬にはジェネリックといい内容は同じで効果も同じですがお薬の価格が安価という薬剤があります。

    2. お薬の特徴
    a)いずれのお薬も黄体ホルモン剤や、ピルに比べると作用が強いと考えられます。

    b)お薬による治療の後、子宮内膜症の症状が止まる事があります。また更年期に近い方ですと、そのまま更年期に逃げ込みを企てる事も可能な時もあります。

    c)若い方から更年期に近い方まで、比較的幅広い年齢層の方に使用可能です。

    d)手術などの他の治療の前あるいは後に用いられる事で、手術をし易くしたり、手術後の再発率を低下させる事が出来ます。

    3. 副作用
    a)お薬を使用する事でかえって出血が止まらなくなる時があります。 例えば粘膜下筋腫を合併している時など

    b)更年期に似たホルモン状態になるため、更年期障害に似た症状が出る時があります。 顔がカーと熱くなる(ホットフラッシュ) 汗、眠りが浅い、不安感など、これらの症状が出た時は少量の卵胞ホルモン剤を内服すると症状が抑えられるのが普通です。・・・アドバック療法といいます。

    c)あまり長く用いる、再発した為に何回もくり返して用いると将来骨粗鬆症になる率が高くなる可能性があります。いろいろな対策があるので医師と相談しましょう。食事、お薬、運動、他の治療法との併用など。

    d)肝臓の機能障害やむくみが出てくる事があります。時々の検査が大切です。

    e)もともと高血圧症や糖尿病、脳血管障害や血栓症があると言われた方は要注意です。

    f)更年期に出てくるようなうつ症状が出現する時があります。おかしいなと思ったら医師にお話をしましょう。またもともとうつ気分がある方は別の治療法が良いかも知れません。

    g)内服薬では皮膚に色素沈着や関節痛、筋肉痛が出る方がおられます。これらの症状があまり強く出た時はお薬を中止した方が良い時もあります。
    h)この他もし何か心配な症状が出たら医師と相談しましょう。

  3. 漢方薬

    症状にもよりますが漢方薬がすすめられる時もあります。漢方薬がメインに用いられる場合、注射薬や点鼻薬による治療を行った後、漢方で再発を防ぐ等いろいろな治療法があります。産婦人科や漢方治療に強い専門家と相談されると良いでしょう。
    桂枝茯苓丸 当帰芍薬散 芍薬甘草湯 などが用いられています。

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治療~2.お薬による治療法

子宮内膜症の新しい薬
  ディナゲスト錠(薬剤名)
  ルナベル配合錠(薬剤名)

子宮内膜症にはいろいろな薬剤が用いられております。
最近 1.ディナゲスト(薬剤名)という薬剤が子宮内膜症の薬剤として承認されました。7月には 2.ルナベル配合剤(薬剤名)が承認される見込みです。

双方とも女性ホルモンが主体の薬剤ですから、今迄の薬剤にはないメリットが考えられています(例えば長期投与が可能)。
ただし幾つかの副作用も考えられていますので、薬剤を使用の時は、担当の先生とよくお話をする事が大切す。
これには
 1. 予測される効果
 2. 使用目標期間
 3. 使用終了後、再発した時の対策
 4. 考えられる副作用とその対策
 5. 費用  などがあげられます。

1 ディナゲスト錠(薬剤名)(ジェノゲスト錠)

この薬剤は女性ホルモンの中の黄体ホルモンという薬剤です。

薬剤はどこに効くのでしょうか
1. 脳の視床下部・下垂体という所に作用して排卵そのものを抑える作用があります。
2. 卵巣の中の卵が入っているお部屋-卵胞の発育を抑え、ここから出るエストラジオールというホルモンの働きを抑える作用があります。このエストラジオールは、子宮内膜症の発育に関係すると考えられています。 
3. この薬剤は子宮内膜自体にも働いて、子宮内膜が働くのを抑える作用があると考えられています。子宮内膜症の大もとの子宮内膜の働きを抑えると、子宮内膜症の治療効果はあると考えられます。

どの位の効果があったのでしょうか
全国的に使われ始めた薬剤ですから、どのような所に効果があったかは、まだまとまったデータは出ていないようです。
予め薬の効果を確かめた製薬会社の調査では、
 1.子宮内膜症に伴う症状の改善
 2.卵巣チョコレートのう腫の縮小
等を認めたとの事です。

どの位使えるのでしょうか
お薬の使用期間は原則医師との相談が必要です。まず主治医の先生と相談しましょう。

お薬の承認を受ける前の治験のレベルでは24週間(6ヶ月間)と、52週間(13ヶ月間)長期的に使用して調べていますが、いずれも重大な異常は出ていないようです。
(持田製薬社内資料-長期投与試験から)
もともと子宮内膜症の薬剤は6ヶ月位の使用が普通です。6ヶ月を一応の目標にするのは将来の骨粗鬆症の予防が大切という事なのですが、この薬剤は女性ホルモンの為、骨粗鬆症が進む可能性は非常に低いと考えられます。(研究上は1/3位です)。
ホルモン剤として副作用が出る時もありますから、(ほてり、乳のはり等)これらの症状を無視して用いる訳にはいきません。しかし理論上は長期間の使用が可能になるでしょう。

考えられる副作用
 1. 最も多い副作用は不正子宮出血だそうです。
   この出血は使用期間が長くなると減るそうです。
 2. ほてり、頭痛
 3. 腹痛、背部痛、下腹痛
 4. 乳房の不快感
 5. 長く使用すると体重増加、胃部不快感、動悸等も出てくるようです。

効果や副作用は当ネットで
すでに使用している人の印象などでは当ネットの掲示板に投稿があるようです。参考にされてはいかがでしょうか。

使用してはいけない人
 1. 妊娠している人、あるいはその可能性のある人
 2. 診断のつかない異常出血のある人
 3. うつ症状のある人は、この薬剤で症状が悪くなる時があるので医師と相談が必要です。
 4. 肝機能が悪い人はこのお薬でさらに悪化する事もあるので医師と相談が必要です。

考えられる副作用
今迄用いられていたピルと同じですから、注意事項はほぼ同じと考えて良いでしょう。

今回の薬剤の発売の前に改めて実施した調査(治験といいます)では、不正出血と悪心(気分が悪くなる)などだそうです。

なお副作用については医師との相談が大切になります。
喫煙は、この薬剤との併用で狭心症などの心血管系の異常が起こる可能性があるため、出来るだけ止める事が必要でしょう。

血液検査、体重、血圧測定等の注目事項は今まで通りです。

なお外国の一部の調査では子宮頚がん、乳がんになる確率が少し高くなるというものがあります。このため使用に際して、これらについて注意がある時があります。
この他この薬剤に対する副作用や注意事項は薬剤のネットを参考にされると良いでしょう。

2 ルナベル配合剤(薬品名予定)(ノルエチステロン エチニルエストラジオール の2種類のホルモン剤の合剤です。)

この薬剤は女性ホルモンの卵胞ホルモンと黄体ホルモンが入っている薬剤で今迄、経口避妊薬ピルとして用いられていたものです。

実際の所、本来避妊薬として用いられているピルは、半数以上が子宮内膜症の薬剤として用いられています。
つまり、子宮内膜症の治療目的の方が多いという事になります。

この事から、世界中でこれらの薬剤を保険の効かないピルとしてではなく、保険の効く子宮内膜症の薬として許可が出るようになりつつあります。
例えばイギリスでは、子宮内膜症と月経困難症の薬として承認されています。

今までピルとして使用されていたとすると、何というピルと同じだったのでしょうか
 1. オーソM
 2. シニフェーズT28
 3. ノリニール
などという名前の薬剤と同じです。

つまり「子宮内膜症に伴う月経困難症」を治療する「治療用低用量ピル」と言えます。

どのような効果があったでしょうか
 1. 子宮内膜症に伴う症状を改善し、月経時の鎮痛剤の使用量を減らす事が出来たそうです。
 2. 卵巣チョコレートのう腫を小さくする効果があるそうです。
 3. 子宮内膜症の時に高くなる腫瘍マーカーCA125を低下させる効果があったそうです。

※しかし、いずれもこれらは薬剤発売前の製薬会社のデータです。実際に全国で使用された時は、またどんな効果が知られるようになるかは分かっていない部分もあります。
ただ既にピルとして用いられ、子宮内膜症の人にも使われていたものですから、大幅な効果の変更などはないと思われます。

どの位使えるのでしょうか
ピルの使用期間の経験がありますから、一部の薬剤のように6ヶ月が限度という事はなさそうです。

症状の改善度にもよりますが、長期間の使用が可能と考えられます。しかしこの期間については、医師との相談が何より大切になるでしょう。

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治療~手術による方法

手術の方法は幾つかの方法があります。年令や症状、赤ちゃんを希望されているか等によりいろいろな方法があります。



  1. 手術をすすめられるのはどんな時でしょうか。

    1. 子宮内膜症が進行していてお薬による治療では効果が望めない時

    2. 何回もお薬による治療が行われたのですが再発をくり返している時。
      将来お薬による治療の副作用が問題になる事があります。

    3. 赤ちゃんを希望されていて、手術が最適であると判断された時

    4. 少しでも悪性腫瘍(がん)が疑われる時。あるいは将来のがん化が心配な時。
      コラム
      少ない事ですが、子宮内膜症が「がん化」する事があると考えられています。特に子宮内膜症が卵巣に出来ている時はそれなりの注意が必要と考えられています。
      子宮内膜症とがんのページをごらん下さい。


  2. どんな手術方法があるのでしょうか。

    1. 開腹手術・・・お腹を切開する手術

    2. 腹腔鏡下手術・・・お腹に小さな穴をあけて行う手術

    3. 特殊な手術・・・膣式アルコール固定術、UAEなどがあります。
      腹腔鏡下手術と膣式手術の組み合わせなど。


  3. 手術方法について
    • 開腹手術
      お腹を縦あるいは横に切開します。
      子宮内膜症を含めて何回か開腹手術をうけた事がある時、あるいはお腹の中の強い癒着が想像される時は開腹手術をすすめられる時があります。開腹に次のような手術が行われます。
      1. 子宮を全部とる手術
        膣式にとる事も可能な時があります。





b.子宮内膜症の部分切除を行う時





子宮内膜症の部分だけを切除しようとする時主に赤ちゃんが欲しい時に行われます。


C. 卵巣に出来た子宮内膜症を治療する時
卵巣の一部に子宮内膜症がある時は、その部分を切除するか、内容を吸出し、その後にアルコール(100%アルコール)をいれる治療を行う時があります。但しこの手術は正常と思われ残した卵巣からまた子宮内膜症が出る事があります。

卵巣が全部子宮内膜症になっている時は、卵巣全てを切除する事がすすめられる時があります。
このような時は周囲の腸や子宮、腹膜などへの癒着があるのが普通です。
はれている卵巣の直径が10cm以上の時は将来の「がん化」を含めて注意が必要です。

ⅱ腹腔鏡下手術

a.開腹手術で行う手術の殆どが腹腔鏡下手術で出来るとの考えて良いでしょう。
しかし病変の広がり、癒着の程度、患者さんの年令、体力、合併症の有無などから開腹手術がすすめられる時があります。腹腔鏡下手術を行っても途中から開腹手術に変わる時もあります。手術前に手術の利点や考えられる副作用について詳しくお話があるのが普通です。

b. 腹腔鏡下ではさらにいろいろな手術が行われています。

■子宮と直腸をつなぐ靭帯という組織を切除する手術

この靭帯を切り離すと生理痛が良くなると考えられています。(ルナ…Lunna手術といいます)
またさらに深く切り離すデープルナ(deep Lunna)という方法もあります。

■卵巣に出来た子宮内膜症を治療します

腹腔鏡下にはれている部分を切除する方法と、内容を吸い出した後にアルコールを入れて再発しないようにしてしまう方法があります。

ⅲ.特殊な治療

■卵巣に出来た子宮内膜症(チョコレートのう腫ともいいます)は膣の方からの治療がすすめられる時があります。

膣の方から針を刺し、内容を吸引した後アルコールを注入する。このアルコールでチョコレートのう腫をおこす元を殺してしまう方法です。日帰りか1泊の入院で済むのが普通です。またお腹に傷跡が残らないという大きなメリットがあります。お薬による治療をくり返すよりチョコレートのう腫を早々ととっておいた方が結局は治療期間が短く、お薬による副作用を心配しないで良い事もあります。
しかし開腹手術や腹腔鏡下手術などのようにお腹の中を直接観察しながら手術をうけるといろいろなメリットがある事も事実です。
治療の方法については医師との詳しいお話が大切です。(不妊症のページに詳しい説明がありますのでごらん下さい)

■子宮動脈塞栓術(UAEといいます)
子宮筋腫のページをごらん下さい。

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子宮内膜症が再発したら

子宮内膜症は再発する可能性が比較的多い病気と考えられています。そのため子宮内膜症は、お薬や手術などの治療をうけてもその後の管理をうける事が大切です。



  1. 再発がないかどうかはどうしてチェックするのでしょうか。

    1. 生理痛などの自分で感じる症状(自覚症状といいます)が出てこないか。
    2. 婦人科診察
    3. 超音波検査
    4. 血液検査(腫瘍マーカーなど)
      自分で痛みを感じなくても、先に血液検査に異常が出る時もあります。

  2. 再発があった時はどのような処置をうけるのが普通でしょうか。

    1. お薬がすすめられる時があります。

      1. 前にお薬による治療をうけ、それが有効だった時は同じお薬をすすめられる時があります。

      2. 前回のお薬があまり効かなかった時は別のお薬がすすめられる時があります。

      3. 再発したけれど症状が軽いと判断された時は、弱いお薬を長期間使用するよう指導をうける事があります。

  3. 手術をすすめられる時があります。

    1. 最初はお薬を使った治療をうけたのですが、お薬が効かなかったり、効いても再発をくり返したり、再発の症状がより強くなった時は手術をすすめられる時があります。

    2. 手術をうけても、また別の所に子宮内膜症の症状が強く出てきた時は再度手術をすすめられる時があります。

    3. まれな事ですが、子宮内膜症の悪性化が疑われる時、悪性化するかも知れないような時は手術がすすめられる時があります。急に子宮が大きくなった時、大きな卵巣腫瘍が出来てきた時、超音波やMRIで異常と言える影が出てきた時など。

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子宮内膜症とがん

  1. 子宮内膜症はがん化するでしょうか。
    最近子宮内膜症ががん化する時がある事が分かってきました。

    1. 主に卵巣に出来た子宮内膜症― チョコレートのう腫 ―ががん化する可能性があると考えられています。
    2. がん化する比率は少しずつ高まっている可能性があります。
    3. どんなタイプの方は注意すれば良いのでしょうか。

      1. 若い方でも特別大きなチョコレートのう腫のある方は注意された方が良いでしょう。
      2. だんだん大きくなるタイプは注意が必要です。
      3. チョコレートのう腫を覆っている膜の部分(被膜といいます)がモリモリと盛り上がってきた方は気をつけましょう。
        《卵巣腫瘍・良性》のページをごらん下さい。
      4. 更年期近くになって本来なら自然に子宮内膜症が改善される時期に、逆にチョコレートのう腫が大きくなる方。
        この時期チョコレートのう腫の直径が大きい時(4cm~6cm以上)は医師から注意されるようすすめられる時があります。

        要注意(とはいっても必ず癌化するという事ではありません………何かあると心配なので注意しましょうという意味です)の時は医師からお話があり、必要な時は検査がすすめられるでしょう。


  2. 子宮内膜症になると他のがんになり易いという事はないでしょうか。

    スエーデンの女性を対象とした研究では子宮内膜症の方は、そうでない方に比べて
    卵巣がんの発生率が 1.9倍
    乳がんの発生率が 1.2倍
    という研究があります。
    また、経過の長い子宮内膜症の方はさらに気をつけた方が良いというデーターがあります。
    Brinton LA et al., Am J Obstet.Gynecol.
    176: 572-579. 1997.

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子宮内膜症と不妊

子宮内膜症と不妊〔1〕
子宮内膜症と不妊は関係があると考えられています。
1. 重症タイプの子宮内膜症は不妊の原因になる可能性があると考えられています。
2. 不妊症の患者さんの30~60%に子宮内膜症が見つかっています。
3. 逆に子宮内膜症の方は少なくみて30%、多く見積もると50%の方が不妊になると考えられています。
4. 子宮内膜症はいろいろな所に異常が出ます。例えば子宮本体、あるいは卵巣など。 異常の出来ている場所、その程度により不妊治療の方法に差がある事があります。
5. 子宮内膜症があると、不妊になる事がある事は分かっていますが、何が不妊の原因になるのか、全てが明らかになっているという訳ではありません。

子宮内膜症がある時は、薬剤による治療をすすめられる時もあります。
しかし不妊症の方は、別の治療法をすすめられる時があります。
いずれにせよ主治医と詳しくお話をされる事が大切です。
1. 男性ホルモン用の作用のある薬剤(ボンゾール―商品名)が、子宮内膜症を縮小させたり、子宮の中の環境を良くする可能性があると考えられています。
このため、子宮内膜症の症状によっては、まず始めにこの薬剤を用いる事をすすめられる時があります。
2. 子宮内膜症治療に一般的に用いられる薬剤Gn-RHアナログ(スプレキュア、ナサニール―商品名)が最初に使われる時もあります。
3. しかし、いずれのお薬も不妊症治療で効果がある確かな証拠がないという研究もあります。

子宮内膜症のある人で不妊治療をうけている人は、子宮内膜症の程度、あるいはどこに主な異常があるかによりますが、早目に手術をすすめられる事があります。
ただし手術の方法もいろいろあります。 主に腹腔鏡下の手術がすすめられますが、症状によっては開腹手術をすすめられる時があります。
1. 腹腔鏡下手術でお腹の中を洗滌するだけで妊娠する時があります。
これは子宮内膜症の人は、お腹の中に、子宮内膜症によって出されるいろいろな物質がありますが、これらを洗滌で洗い流してしまうことが出来るからです。
例えばマクロファージ サイトカイン、プロスタグタンディン等(これらはいずれも妊娠の妨げになると考えられています。)
  ・例えばプロスタグランディンは子宮内膜症の痛みの原因になると考えられています。
  ・サイトカインの中のある種の成分は体外受精の治療効果と関係があると考えられています。
2. お腹の中の癒着をはがす、小さな子宮内膜症を電気メスやレーザーメスで焼く、卵巣に出来た子宮内膜症(チョコレートのう腫)を手術的に治療すると妊娠率が高まると考えられています。
このため、もしこれらの症状があった時は腹腔鏡下でお腹の中を洗滌する時にこれらの治療を一緒にする事があります。
ただし卵巣チョコレートのう腫があった時は、その治療法が沢山あり、治療後の妊娠率に関係する事があると考えられています。 医師とよく相談する事が大切でしょう。

子宮内膜症の人が、子宮内膜症の治療をうけ、腹腔鏡下手術で治療や洗滌をうけてもなかなか妊娠できない時は、体外受精も治療の選択に入れた方が良いかも知れません。
これは勿論、治療法として体外受精も考えている人が対象です。
1. 子宮内膜症の人に対して体外受精の方が妊娠率が高いという研究があります。
2. 但し子宮内膜症の人は卵巣から出る卵の質が悪い時もあり、完全な治療法ではないという事も考えておいた方が良いとの考えもあります。
3. 35才以上の方は、腹腔鏡下手術をうけても妊娠されない時は、早目、早目にステップを上げた方が良いとの考えがあります。

子宮内膜症と不妊〔2〕
子宮内膜症のある方で、赤ちゃんを希望されている人は、子宮内膜症の程度が軽ければ早目の積極的な治療がすすめられるようです。
子宮内膜症の治療は沢山あります。最近はピルを用いたり、Gn-RHアナログ(注射薬、点鼻薬)等が用いられる事が多いのですが、これらの治療法は殆どに排卵を抑える作用があります。
もし子宮内膜症が軽度と判断された時は、これらのお薬を用いて、子宮内膜症をある程度治療してから、不妊治療をする方法と、子宮内膜症の治療をせずに早々に不妊治療をする2つの選択肢があります。
今の所子宮内膜症が軽い時は、不妊治療を優先させる。それも排卵誘発剤を用いて人工受精をする方法が良いのではないかという考えがあります。
しかし問題点もある事に注意をしておきましょう。
1.子宮内膜症が軽症であるという判断は意外とむずかしい。
2.子宮内膜症が無いと判断された人でも、腹腔鏡でチェックすると、子宮内膜症が見つかる時がある。
そういう人で腹腔鏡下で子宮内膜症の治療をしたり、洗滌をすると妊娠率が上がる事が知られています。
3.子宮内膜症のある方で、不妊治療をうけている人は、主治医とよくお話をしましょう。

子宮内膜症と不妊〔3〕
不妊治療では子宮卵管造影検査(HSGといいます)後に妊娠する時があります。
一般的には不妊症でHSG検査をうけた人の約30~40%の人が検査後半年以内に妊娠すると考えられています。
その理由の1つは、検査をする事でそれまで悪かった卵管の通りが良くなる事が考えられます。
しかし現在はそれ以上に、卵管を通してお腹に入った造影剤が、子宮内膜症が原因の不妊の治療になるのではないかという考えが有力になってきています。
その背景には、
1.不妊症の原因の1つに子宮内膜症がある事が多いと考えられる事。
2.子宮内膜症の時に、お腹の中にあるマクロファージという細胞の活動が活発になるらしい事。
3.このマクロファージの活動が活発になると不妊になるらしい事。
などが挙げられます。
ところがHSGの時に用いられる造影剤が、このマクロファージの働きを抑え、結果的に妊娠し易くなるという考えが強くなってきています。
HSGの検査の後妊娠する人が多い事は以前から知られていました。その理由が最近になって解明されつつあるという事になるのかも知れません。

子宮内膜症と不妊〔4〕
軽症の子宮内膜症の人は、不妊の原因になる事はなさそうです。
しかし子宮内膜症は進行する可能性があるので注意は必要です。
子宮内膜症は症状の程度により幾つかの段階に分けられます。これを進行度といいます。
   当ページ  病気の進行度  をごらん下さい。
赤ちゃんが欲しい人は、欧米では腹腔鏡検査を比較的早期から行うのが普通です。その結果をみて子宮内膜症の重症度を推測しています。この時主に用いられているのはr-AFS分類です。
この分類のⅠ、Ⅱは比較的軽症と考えられていますが、このグループの人は、一般の不妊治療の上でも、体外受精が必要になった場合でも、子宮内膜症のなかった人に比べ、妊娠率に差がないと考えられています。
ただこの事は、軽い子宮内膜症の人は治療が必要ないという事を意味している訳ではありません。 不妊症の場合は、他に原因がある事もあり、それなりの不妊治療が必要な事は言うまでもありません。
また子宮内膜症は良性の病気ですが、少しずつ進行する事があります。
医師の指導と治療が必要な病気でもあります。

子宮内膜症と不妊〔5〕
子宮内膜症(重症)が原因と分かっている不妊症は、何らかの治療をしなければ妊娠できない可能性があります。
子宮内膜症が原因で不妊症になっている人がいます。主に子宮内膜症の重症のタイプに多いと考えられています。
子宮内膜症の重症度については当ページ、
   病気の進行度  をごらん下さい。
さて不妊症の原因によって、何も治療しなかったら、どうなるかを調査した研究があります。
これによると、何もしなかった場合の妊娠率は
  1.原因不明の不妊の人では    21.2%
  2.排卵に異常のある不妊症の人   9.2%
  3.重症の子宮内膜症で不妊の人   1.1%
だったそうです。



永井荘一郎 著  今すぐわかる「子宮内膜症」 (新風舎) 
セカンドオピニオンを求めているあなたへ 
子子宮内膜症が不妊の原因になると言っても、その原因が1つとは限りません。
つまり多様な原因が考えられるので、それに合わせて積極的な治療が望まれるという事のようです。


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子宮内膜症と痛み

子宮内膜症と痛み〔1〕


子宮内膜症の重大な作用に月経痛を始めとする、いろいろな痛みがあります。
これらの症状を抑えるためにいろいろな治療が行われています。一般的な治療法は現在通院している病院の医師と御相談されるか、あるいは当サイトの子宮内膜症の項目をごらん下さい。
ここでは最近の情報をお伝えしたいと思います。


■薬剤


  1. ピルが子宮内膜症に有効なのは知られていますが、現在ピルは避妊薬としてより、子宮内膜症用に用いられる方が多いと考えられています。

  2. ピルはその内容により1相性~3相性に分かれますが、1相性の方が痛みに効くのではないかという考えがあります。

  3. ダナゾール(商品名―ボンゾール)という薬剤がありますが、この成分を避妊リング(IUD)の中に入れ、子宮内に挿入する方法があります。
    子宮内膜症に有効で、痛みに対する効果があると考えられています。
    この治療は限られた病院で行われていますので、興味のある方は主治医と相談されると良いでしょう。

  4. 乳がんの治療に用いられるアロマターゼ阻害剤というお薬があります。
    最近不妊症の治療にも用いられるようになってきましたが、女性ホルモンの働きを抑えるという意味で、今後の効果が期待出来るかも知れません。
    ただ子宮内膜症治療薬としての保険は通っておりません。

  5. スプレキュア(商品名)やナサニール(商品名)という点鼻薬が子宮内膜症用のお薬として使用されておりますが、これらはいずれもGn-RHアナログと言い、脳の中枢で働いて、卵巣ホルモンの働きをコントロールしています。
    同じ脳の中枢で働くGn-RHアンタゴニストというお薬があります。現在既に不妊症の治療として用いられていますが、これらのお薬が将来子宮内膜症に効果がある可能性があります。
    しかしこのお薬も保険が効きません。また理論上は効果があるはずですが、どの程度効果があるかの正確な治療経験が出ていません。


■手術


子宮内膜症の痛みの原因は子宮の後から直腸にかけて出来た子宮内膜症が原因であろうと考えられています。
このため痛みが強い方で、薬剤等を用いたものの、改善しない時は手術がすすめられる時があります。

手術の方法には幾つかあります。



  1. 子宮全摘手術
     ・開腹して行う手術
     ・腹腔鏡下に行う手術


  2. 子宮の後~直腸にかけての子宮内膜症の部分を切除する
     ・開腹して行う手術
     ・腹腔鏡下に行う手術
       最近はこの方法が広まりつつあります。レーザーメスや電気メスで切開します。



  3. 手術については手術法の選択、その効果と考えられる副作用等について医師とよくお話をする事が大切です。




子宮内膜症と痛み〔2〕


子宮内膜症による痛みの改善や子宮内膜症そのものの治療にダナゾールを避妊リングにしみ込ませた器具を使用するという方法があります。


ダナゾールというのは、飲んで効く子宮内膜症の薬剤です。これをIUD(避妊リング)にしみ込ませ、子宮内に入れる治療法です。
子宮内に入れたIUDから少しずつお薬が出て、子宮内膜症の痛みを抑えるそうで、痛みに対する効果はかなり高いそうです。


ただIUDですから、若い女性にはどうでしょうか。
しかしIUDに他に膣の中に入れるリングもあるとの事ですので痛みに悩まれている人は一度相談されても良さそうです。


一番最初にこの方法を考えたのは群馬大学名誉教授の五十嵐正雄先生です。
現在群馬中央総合病院(Tel 0272-21-8165)に勤務されています。
前橋市ですから遠いかも知れませんが、予め診察日を聞いてから受診されると良いでしょう。
ただ前橋市が遠い方は、先生の治療法を教えられた医師が全国にいる可能性があります。この点についても予め問い合わせられると良いかも知れません。


子宮内膜症と痛み〔3〕


精神的負担が起る時があります。


20代から40才の女性では生理痛があると子宮内膜症があるのではないかと疑われる時が多いのですが、それでも診断がむずかいしい時があります。


子宮が大きくなっていたり、卵巣が腫れていれば診断がつく事が多いのですが、子宮や卵巣に異常が認められなくても子宮内膜症と言う事はあります。
このため子宮や卵巣に典型的な異常が認められない時は、診断が遅れる時があります。こういう時は職場や学校で本人のつらい気持ちや痛みがどれ程強いか理解されず、疎外感を感じる人がかなりいる事が分かっています。
適切な時期に適切な治療を受けないと、精神的な負担がさらに強くなる事があり、今子宮内膜症を専門とする医師の間で新たな問題となっています。


痛みについて職場の産業医や近所の内科で原因が分からないと言われた時は、1度は産婦人科や女性科医の診療をうける事も考えてみては如何でしょうか。


原因が分からなくて、気持ちの上で追い詰められてはなりません。医師との詳しい話し合いが役に立つ事があります。

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子宮内膜症と漢方

子宮内膜症には漢方がよく使われます。
使用される方法は様々のようです。


 1. Gn-RHアナログという強い薬剤を使用し子宮内膜症を痛めつけておいてから、使用する方法。
 2. 漢方を主体に治療する方法。
   例 ・桂枝茯苓丸を長期間用いる
     ・通常は当帰芍薬散、月経時を中心に芍薬甘草湯
 3. 他のGn-RHや男性ホルモン作用がある内服薬の併用で、他の薬剤の効果を高める方法。
     ・桂枝茯苓丸
 4.疼痛剤として用いる薬などがあります。
     ・芍薬甘草湯

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子宮内膜症と遺伝

子宮内膜症は遺伝が関係するだろうかと言う質問が良くあります。はっきりとした遺伝関係は証明されていません。ただし、家族間に子宮内膜症が発生しやすいということはあるようです。
 例えば、双子で子宮内膜症と言う人がいます。双子ではなくても、姉妹で子宮内膜症と言う人がいます。

 子宮内膜症が家族間にないかという調査は、色々ありますが、今の所、次のような考えがあるようです。

1.姉妹で子宮内膜症の人がいると、子宮内膜症になる確率は高い。

2.母親が子宮内膜症だと、娘が子宮内膜症になる確率は高い。

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子宮内膜症の不思議

        

子宮内膜症ににせ薬(プラセーボといいます)でも効く!
子宮内膜症にはたくさんのお薬があります。
現在も新しい薬が出ていますし、研究中の薬もたくさんあります。
どの病気でもそうですが病気に効く薬が開発されると、本当に効くかどうかの研究が始まります。
この時、まず希望者を募り(薬の対象となる病気をもっている方です)、本命の薬と、何も薬の成分の入っていない儀薬(placebo-プラセーボといいます)を飲んでもらい、本命の薬を飲んだ人にだけ、効果があるという事を確かめるのが普通です。
勿論対象になる患者さんの了解をとってのお話ですが、予め薬剤をもらう患者さんは、本命の薬剤を使用しているのか、そうでないかは知らされていません。
全部の治療が終わって、この薬はやっぱり本命の薬を飲んだ人に効くのだという事が分かる、初めて薬の効果が証明されるという事になります。

 前置きが長くなりましたが、子宮内膜症にはそのプラセーボ(儀薬)でも治療効果がある人の割合が多い事が知られています。その率は何と20%とされています。
勿論 子宮や卵巣が大きく腫れて精密検査や手術が検討されている人には効きません。
卵巣がはれている人は将来、卵巣がんになる人もいるとされています。儀薬での効く人がいるという事を過大評価されては困りますが、いろいろな意味でこの病気は特殊な性質をもっていると言えるのかもしれません。

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子宮内膜症の方に

◆子宮内膜症はその症状の53%が環境によるとの考えがあります。 このため生活環境に注意が必要です。
1)DES(ジエチルスチルベストロールというホルモン)が有害だと考えられています。
  このホルモンは今は使われていませんが、その類似作用がある製品が出回っています。
環境ホルモンが出るプラスチックなどカップ麺の容器、抗菌塩化ビニール系のラップ
     ○・・・無添加ポリエチレン製ラップ  ×・・・ポリ塩化ビニルデン
2)ダイオキシンに注意しましょう。
  殆ど口から入ります。ダイオキシンの濃度の高い食べ物に注意が必要です。
  マグロのダイオキシン濃度が高い⇒gあたりイカの100倍 サケの20倍⇒お寿司はマグロではなくサケを!
3)ビタミンDが良い⇒きくらげ・しらす干し・いくら 等
4)子供の定期的な大豆製品摂取は止めた方が良いという考えがあります。少なくとも過剰に摂取しないようにしましょう。
5)鎮痛剤はバファリン(アスピリン)を優先しましょう。
  ⇒ロキソプロフェンは腎がんの発生率が高くなるというデータがあります。(10年以上で3倍)
6)痩せすぎないようにしましょう。
7)カフェインは関連がないとされています。
8)アルコールは程々に。(関連あるというデータ、ないというデータあります)
9)喫煙は注意が必要です。
10)子宮内膜症の手術を受けた人は手術後に薬の使用がすすめられる時があります。医師からのアドバイスがあります。